ファミリーヒストリーを飾る

上質な生活提案 column2 ノスタルジーに浸りファミリーヒストリーを飾る
外の空気はまだ寒さを感じますが、お日様があたってると心地よく季節が少しづつ春にかわりつつあることを感じます。でも冬の少し寒 さも残るこの時期って、センチメンタルでノスタルジーな感覚も呼び起こしたりしませんか。つい最近知った若い子たちが使う言葉でエモいという言葉があるのだけどご存じですか。 私は、はじめ意味がわからずで言葉の響きから気持ち悪いというキモいと言う意味かと思ったら、それがぜんぜん違う意味合いで、なん とも言い表せない素敵な気持ちになったときに使う言葉だそうです。感情が揺さぶられたとき、予期せず感動したとき、とりわけ心地良 い懐かしさや良質なセンチメンタルを感じたときに使うスラングらしいのです。このエモいという言葉には感情的・郷愁的・ノスタルジック・ヤバい・懐かしい・しみじみ・物悲しい・寂しい・情緒・レトロ・感動的・こういうことが全部詰まってる言葉ということで、感傷的、 情緒的を意味する英語 emotional を略した emo が、若者の間で浸透してスラングとして発展していったそうです。言葉も若者たちによっ ていろいろと変化していくんですね。「エモい」はざっくりとした言葉ではあるものの、「みんながどうかわからないけど自分は今こう感 じているんだ」というニュアンスで自分の感
情を全部をまとめて表現できる便利な言葉のようです。 このエモいって言葉に含まれるノスタルジーな感覚、古い時代の風景、昔の場所の景色、風情やレトロな佇まい、また物に関しても懐か しいと思うものが特に好きな私ですが、パセリセージのインテリアにエモいがあるんですよ。

入口のドアを開けるとすぐ古いシンガーミ シンと古書をエントランスに置いてます。これがかなり古い物で、100 年は経つであろう歴史があるものです。このミシンには模様が描 てあってとても美しいのです。ずいぶん前に古い家から今の家に建てなおす時に廃棄しようとしていたミシンを古いものが好きな私に 主人がこれどうすると聞いてきて、私はこんな素敵な物を捨てちゃだめ!捨てるのだったら私がディスプレィに使うと言って貰った物なのです。古書も同じくあまりにも古くて見る人によっては捨ててしまうかもしれない本です。義祖父母の昔の革のトランクもそうで、私 にとっては若い子が使う言葉で言うと全てがエモい物だったのです。トランクの中からは、かなり古い写真や表彰状や地図がでてきて、 それは全部家族の歴史でした。義祖父は主人が生まれる前、そして義祖母も小さい頃に亡くなっているので、アメリカに住んでいた事と その義祖父が何カ国語も話せる人で新聞記者だったということを知るだけで、あまり詳しいことは知らずでした。もう義理の父と母も他 界しているので、まったく知る余地がない義理の祖父母の歴史なのですが、その革のトランクには歴史を紐解くものが入っていました。

 

25 年くらい前になりますが、私は長く仕事をしていた会社を辞めた 30 代の終わりにランドスケープデザインに興味を持ち、シアトルに ある州立ワシントン大学の夏と冬の短期講習を受講しに行くことがありました。それまでアメリカ本土には行く機会がなかった私は、初 めて行くシアトルの地をワクワクしながら地図をかなり見入っていたこともあり、義祖父母の革のトランクから出てきた地図に赤い線が 書いてあったページが、すぐにシアトルの地だとわかったのです。そして地図には University of Washington ( 州立ワシントン大学 ) も あり、義祖父母があの土地に 100 年前に住んでいたのかと、、一人で古(いにしえ)からの縁に導かれたように感じてしまいました。革 のトランクの中にはラテン語で書かれた義祖父の仕事で表彰されたのだろうか、手書きのカリグラフィーの立派な表彰状、そして義祖母 のドレスデザインとパターンを勉強していたのか学校のディプロマには 1924 年シアトルと記してありました。そしてミシンのシリアル 番号から年代を調べてみたら、1919 年製でニュージャージー州エリザベス工場でつくられたものでした。あの美しいシンガーミシンは きっとアメリカから持ち帰った義祖母の大切なものだったんだと気がつきました。そして古書は義祖父が勉強していた辞書と本たち、辞 書には大正 4 年で西暦 1915 年それぞれの歴史を少しづつ知ることになったのです。本は難しすぎて私にはわからないものばかりです。

小さな家の前で二人の若かりし頃の写真はシアトルのお家で撮ってるようで、義祖父は猫を抱っこして、その家の周りには家庭菜園やお花が咲いていたりとシアトルの家での古ぼけた写真には長い年月を経た今でも幸せを感じとることができたのです。それにしてもきっと その時代は今とは違い日本人が海外で生活するのはいろいろな苦労があったのだろうと思うのですが、この写真にはそんなことも感じさせない長閑な生活と佇まいが満ちあふれてました。実はこの写真や表彰状などをパセリセージの壁にディスプレイの一部として義祖父母 たちに敬意を込めファミリーヒストリーとして飾っています。こういうファミリーヒストリーをインテリアとして飾るのも心がほっこりします。何気ない古い写真などを額装してランダムに壁に飾るだけで、ちょっといい空間になります。一言であらわすとエモいと言う表現になるのかな。知らなかった家族の古い歴史を紐解いていった一部ですが、そしてその記録が部屋の中にインテリア化しているので気 がついたらご覧になって下さい。ファミリーヒストリーをみていると長い時を経て、こうやって現代に繋がっていくんだと、まだ少し寒 さが残るこの時期にノスタルジーな感情に浸りながらタイムトラベラーとなって想いを巡らせるのでした。

パセリセージ 三上星美